トップページに戻る
  少年リスト   映画リスト(邦題順)   映画リスト(国別・原題)  映画リスト(年代順)

Problem Child プロブレム・チャイルド/うわさの問題児

アメリカ映画 (1990)

マイケル・オリバー(Michael Oliver)が主役を演じる典型的な悪童コメディ映画。この種の映画で1990年代の代表は、2.8億ドル稼いだ『ホーム・アローン』、0.5億ドルの『わんぱくデニス』(1993)が有名だが、この作品もアメリカでの興行収入0.5億ドルとかなりの成績だ。3つの映画は悪童ぶりが違っていて、一番悪質なのがこの作品。結構悪意もあるのだが、出演時8歳のマイケル(映画の設定では7歳のジュニア)が巻き起こす騒動は、主人公がキャラクーのお陰で、どんなに悪質でも笑って済ませられるところが観ていて楽しい。テンポの良さもそれに貢献している。しかし、IMDbでは、『ホーム・アローン』7.5、『わんぱくデニス』5.5に対し5.2、Rotten Tomatoesでは、それぞれ55%、23%、4%と評価は低い。まあ、どっちも信用できないので、観て楽しければそれでいいと考えれば、この映画はもっと評価されてしかるべきでないかと思う。ただ、この映画で唯一気に食わないのが、ジュニアを養子として迎える父親の父(ジュニアにとっては祖父)。大きなスポーツ量販店のオーナーなのだが、ある日息子を呼んで、「この店をジャップに売ることにした」と言う。「僕に残してくれるんじゃなかったの?」。「いいや、ヒロヒト株式会社に売るつもりだ」。日本をバカにした表現だ。「でも、土地は僕のものだよね」。「それも売る。ここから川まで全部だ」。「昇給や昇進もなしに、10年以上も奴隷にように働いてきたじゃないか」。「いい勉強になったろ?」。「勉強?」。「誰も信じるな」。「自分の父親でさえ?」。「特に、自分の父親をだ」。性格設定も常軌を逸している。この種の映画では、常軌を逸するのは、悪童だけにしないと、ストーリーが発散してしまう。

映画の冒頭、豪邸の前に捨てられた赤ん坊が、その悪戯好きな性格のため、たらい回しに捨てられる様がスピーディに描かれ、最後は修道女によって運営される孤児院で終る。この、ジュニアという変わった名前の7歳の少年は、孤児院では、悪意があまりなくても修道女、特に院長を結果的にひどい目に合わせてしまい、結局、放り出されることになる。そのジュニアを養子に引き取った養父にとっての問題点は、買い物とパーティのことしか考えない奥さんと、息子を疎んじ 養子など認めない父(ジュニアにとっては祖父)の存在。初日から、ジュニアは騒動を起こし、翌日のキャンプ、週末土曜のご近所の女の子の誕生日パーティ、日曜のリトルリーグ、月曜の無謀運転と立て続けに大問題を起こす。ちょうどそこに、ジュニアがちょうネクタイをつけるきっかけとなった連続殺人犯(もちろん脱獄中)が現れ、ジュニアと養母を人質に取って逃走する。養父は2人に愛想をつかしていたので最初は喜ぶが、ジュニアが残した絵から自分が好かれていたことを知り、身代金を用意して助けに向かうのだが…

マイケル・オリバーは、最高にキュート。天使のような顔から、悪魔のような雰囲気まで、8歳の子が何でもこなすところは凄いとしか言いようがない。しかも、彼本来の性格は、非常に落ち着いて知的だと書いてあるので、すべてが演技なのだ。それなのに、出演した映画は 他に、翌年の続編『プロブレム・チャイルド2』(1991)があるだけ。これだけの才能を潰したのは母親だとされる。『プロブレム・チャイルド2』の出演料を途中で8万ドルから50万ドルに上げるよう強要し、企画を進めていたユニバーサルは渋々支払った。しかし、映画の完成後に訴訟に持ち込み、差額を返済させた。情報が正しければ、天才子役マイケルの俳優人生はこの不祥事で終止符を打たれてしまったことになる。


あらすじ

生まれるには、いい夜だろ?」〔青字は独白〕。外は土砂降りだ。「明らかに、僕の誕生は歓迎されなかった」。籠で作ったベビー・バスケットに入れられた赤ちゃんが、雨の中を運ばれていく(1枚目の写真)。「バスケットの中は僕。運んでいるのはママだ」。行く先は豪邸。母は、バスケットを玄関に置くと走り去った。「うまく行きそうだ。なんて豪華なんだ」。メイドが扉を開け、すぐに奥様を呼ぶ。「こんな素敵な赤ちゃんを捨てるなんて」。気に入られそうになった瞬間、赤ちゃんのおしっこが顔めがけでかけられる(2枚目の写真)。次のシーン。さっきのメイドが同じバスケットを、普通の家に向かって運んでいる(3枚目の写真)。ドアをノックして逃げる。その後、赤ん坊は1歳くらいになり、ベビーサークルの中で立っている。横のTVでは、神父が「世の中には悪い子供など存在しないと、確信を持って言えます」と語っている。「何も分かっちゃいない」。赤ん坊が投げた遊具が窓ガラス目がけて飛んで行き、見事にガラスを割る(4枚目の写真)。次は、小さな家に向かって、バスケットから足のはみ出た赤ん坊を養母が運んでいる(5枚目の写真)。安っぽいドアを叩いて逃げる。その後、赤ん坊は3歳ほどの幼児になっている。「何て変な顔の犬だ」。猫が幼児に向かって攻撃的に鳴く。「きっと、お腹が空いてるんだ。これおいしいぞ(This looks good)」。床に置かれた餌皿の一方に幼児が洗剤を山盛りにしている(6枚目の写真)。猫は幸い死ななかったが…。次は、トレーラーハウスに向かって、バスケットから半分以上体がはみ出した幼児を、養父が必死の思いで運んでいる(7枚目の写真)。車のドアを叩いて逃げる。その後、幼児は6歳の少年になっている。彼がしでかした何かのせいで、トレーラーハウスはブルドーザーに壊されてしますう(8枚目の写真)。少年は、保護司の手で修道女が管理する孤児院へと引きずられて行くが(9枚目の写真)、「ただの冗談だったんだよ。修道女なんかイヤだ!」の独白に、何か悪いことをしたことが分かる。以上、わずか2分半の間に、捨てられた赤ん坊が3回悪さで捨てられる状況が、簡潔に描かれている。
  
  
  
  
  
  
  
  
  

孤児院に入ってからも、軽快なテンポはそのまま続く。「ペンギンて飛べるのかな?」〔ペンギンは修道女のこと。真っ黒な服を着ているから〕。そして、修道女の前に、少年がロープを持って来る。次の瞬間には、子供達が合唱している教室の窓の外を、ロープに吊り下げられた修道女が宙を舞っている(1枚目の写真の矢印)。「ね。僕は 誰にも好かれないんだ。誰が優しくしてくれる? 誰が愛してくれる? そんなバカ いるかい?」「僕は孤児院を好きになろうとした。でも、それから、写真に興味を持った」。半裸の修道女の写真など3枚が紹介される。「その後、事態は悪くなるばかり」。ランチ・タイム。ランチプレートを手に子供達が並んでいる。太った院長が、「子供たち、シチューは残さず食べなさい。育ち盛りには栄養が必要ですからね。それに規律も」と、のたもう。不味そうな料理に、少年は「そんなに栄養があるんなら、なぜ食べないの?」と訊く。院長は配膳係りに目配せし、配膳係りはワザと硬い塊を皿にぼっとん。「僕が、栄養か規律のどっちをもらったのかは分からない」。席についた少年は、塊にフォークを突き刺す。あまりに硬いので、フォークを持ったままランチプレート全体が持ち上がるほどだ(2枚目の写真)。前に座っている子に、「これ何なんだろう?」と訊くと、男の子は、「ジュニア、お願いだから騒ぎは起こさないで」と頼む。ジュニアは、突き刺したフォークを倒すと、勢いよく元に戻る。余程硬いのだろう。「これって冗談かな?」。そして、思い切りフォークを振り上げると、塊は上に向かって飛んで行って天井に張り付く。それを見た子供達が笑う。怪しいと睨んだ院長が席まで来て、「ランチをどうしたの?」と訊く。「おいしかったので、ぺろりと食べちゃいました」。テーブルの下を調べた院長は、「信じませんよ。一度くらい、お行儀よくなさい」。院長が上を向いて神に祈ろうとすると、天井に張り付いていた塊が院長の顔に落ちてくる(3枚目の写真)。
  
  
  

怒った院長は、食事を中断させ、床のモップかけを命じる。そこに、荷物をまとめた子が、「シスター、用意できました」と行って現れる。院長は、ジュニアに対するのとは全く違った甘い声で、「私のお気に入りの坊や。寂しくなるわね」と優しく声をかける(1枚目の写真)。それを聞いたジュニアが、「寂しいって、どこか行くの?」と院長に訊くと、少年は、「聞いてないの? 養子になるんだ。新しいママとパパ、とっても素敵だぞ」と答える。「ホント?」。院長が、嫌味たっぷりに、「そうよ。良い子は、いい家に行けるの。悪い子は、床でも拭いてなさい」。「へつらうぐらいなら、家族なんか要らないや」。ジュニアは、さっそく「へつらう」ことを止め〔モップを投げ出し〕、置いてあったTVをつける。そこでは、全局が、脱獄して逮捕された「ちょうネクタイの殺人鬼」ベックのニュースを流していた(2枚目の写真)。「俺は、悪人じゃない。誤解だ。誰も、俺のことなど分かっちゃいないんだ!」とカメラに向かってまくし立てる姿を見て、「カッコいい男だな」。ジュニアは、捨ててあった人形のちょうネクタイを外すと、少年を迎えに来た養父母の姿を窓から見下ろしながら、首に直接ちょうネクタイをつける(3枚目の写真)。以後、これがジュニアのトレードマークになる。
  
  
  

今日は僕の誕生日。僕がもらった物を見て」。ジュニアは、台所で、山のような汚れた鍋と格闘している(1枚目の写真)。そこに院長がやってくる。「何をノロノロやってるの? あと20分で夕食の準備が始まるのよ」。「手は2本しかないよ」。「私の顔が映るくらいピカピカに磨きなさい」。ジュニアは、汚れのこびりついた蓋を手に取ると、「今は、こんなだもんね」。院長が「ただでは済ましませんよ」とジュニアに手を伸ばした瞬間、積んであった鍋が崩れ、尻餅をついた院長の頭に鍋がはまる。「うへー、鍋付きペンギンだ」(2枚目の写真)。その後、院長が居丈高に廊下を歩いて来る。「きっと、また、床掃除をさせられる」。ジュニアの足が、廊下に置いてあったバケツを倒す(3枚目の写真)。石鹸水で滑って転んだ院長は、そのまま廊下を滑走して突き当たりのゴミ捨て口から飛び出て(4枚目の写真)、ダンプスターへ真っ逆さま。
  
  
  
  

怒った院長は、市の児童福祉担当者を呼びつける。担当者の前には、院長の他にも、ジュニアに手を焼いた怒れる修道女が4人並んで口々に文句をまくしてる(1枚目の写真)。担当者は、何とか静めて「証拠がありません」と言うと、修道女たちは「証拠など要るもんですか。あの子は邪悪です」と一斉に叫び出す。「どんな子でも、愛してあげないと」。院長は、「下らない話はやめなさい」。そして、「ジュニアを放り出すか、新しい修道女を捜すか」と迫る。担当者は、興奮しないでと頼み、「ジュニアが何と言うか、聞こうではありませんか」と提案する。呼ばれたジュニアは、両手を組んで殊勝そうに、「ごめんなさい、シスターさんたち。どうか、汚いトイレをゴシゴシ洗うのは勘弁して下さい。僕、いい子になります。約束します」とお願いする(2枚目の写真)。担当者は、「ご覧になりました? 謝りましたよ」と自慢げだ。「どうか、もう一度チャンスを下さい。僕、勉強したいんです。そうすれば、お利口になって、神父さんになります」。「聞きました? 神父ですよ!」。ジュニアに感心した担当者は、「ジュニアは、この孤児院から移しません」と宣言する。それを聞いたジュニア。「移す? 移すって どういうこと?」と担当者に訊く。「心配するんじゃない。君は孤児院にいない方が幸せだと、修道女の皆さんが提案されたんだ」。これを聞いたジュニアは、バカじゃないかと、ゲラゲラと笑い出す(3枚目の写真)。「何が可笑しいんだね?」。「あんたさ、この あほんだら(you stupid dick)」。すかさず、修道女が「ほら、邪悪でしょ」と口をはさむ。「孤児院にいたくないと言うんかい?」。「なに考えてんだよ 脳たりん(Think much, pea brain)。出たいに決まってるだろ」(4枚目の写真)。院長は、それ見たことかと、「どうです。この子は、矯正不能ですよ」と強弁する。それを聞いたジュニアは、「矯正不能(incorrigible)」の意味が分からなくて、「僕が何だって? なんで、英語使わないんだよ」と生意気に口を出す。担当者が、「この子は、こう言いたいんでしょう」と最後の擁護を始めると、ジュニアは同じような格好と話し方で、「肩をすくめたり、こんな風に手を動かすと、私が ちゃんと分かって話してるんだと、分かるでしょう」と物真似する。ようやくジュニアの本性に気付いた担当者は、「この子が 錯乱状態にあるのは明白ですな。悪魔を擁護するところだった。この子供は、可能な限り速やかに孤児院から移します」と再宣言する。満足そうな院長。ジュニアは、「おい、急げよ! 年とっちまうだろ(I'm not getting any younger)」(5枚目の写真)。表情の変化が面白いので、ユニークな台詞とともに、ジュニアの顔を何枚も紹介した。
  
  
  
  
  

授業の中で、子供達が、ペンパルへの手紙を書いている。ジュニアは、ベックが一面に掲載された新聞を見ながら手紙を書いている(1枚目の写真)。「ちょうネクタイの殺人鬼様。刑務所はどうだい? あんたの素敵な写真が一面にのってるから、大事にとっとくよ。会ったことはないけど、お互い似てると思うんだ。誰も理解してくれないだろ。ちょうネクタイをしてるから、あんたとそっくりだ。いいニュースがある。ここを出られるんだ。すごいだろ? あんたの、ナンバーワンのファン。JR」。すぐに、刑務所のシーンに切り替わる。ベックは所内でわがもの顔に振舞っている。入所者も怖くて一歩引いている。看守が「お邪魔して済みません。お手紙が」と恐る恐る手紙を渡す。ジュニアが出した手紙だが、JRという差出人は、たまたまベックの知り合いの極悪犯のイニシャルと同じで、重罪で収監中の男だった。「いいニュースがある。ここを出られるんだ」の部分だけ見て、仮釈放されたと思い込む(2枚目の写真)。
  
  

映画では、もっと前にくるシーンだが、あらすじの快適なテンプを崩さないよう、ヒーリー夫妻が、ジュニアの養父母となるまでの話をまとめて紹介する。最初のシーンは、産科の医院で不妊症を宣告される場面(1枚目の写真)。医者は、模型を見せながら、黄色が卵巣、緑が卵管だと説明し、奥さんには黄色の部分がなくて、緑の部分は茶色だと教える。後半は悪い冗談としか言いようがないが、卵巣がなければ子供は授からない。そこで、医者は養子を勧める。2番目のシーンは、奥さんの最初の反応。「私は中古品は使わないの。だから中古の子供も要らない。養子なんか嫌!」。3番目のシーンは、お向かいの豪邸で、華やかに行われているキッズ・パーティを見て、奥さんが「子供がないから、キッズ・パーティには招待されない」と不満を漏らす。これをいい機会と捉えた夫は、養子のことを蒸し返し、言下に拒否されると、「こんな風に考えたらどうかな。世の中の母親たちは、天から与えられるもので間に合わせている。しかし、君と僕は子供を選べるんだ。買い物をするようにね」と突飛な提案をする。亭主の父親が大型店のオーナーなので結婚したような買物・浪費大好き人間の奥さんは、この言葉に動かされて養子にOKする。そして4番目。夫妻は、市の児童福祉事務所を訪れる(2枚目の写真)。対応したのは、さっきのあの担当者(3枚目の写真)。ウェイティング・リストに載せたので、7年後には順番が来ますと言って脅した上で、2人が気に入ったので「今朝、話があったばかりの7歳の少年」を特別に手配してあげてもいいと切り出す。「頭がきれて、ちょっと やんちゃですが、この年の子はみんなそうでしょ?」と言い、写真を見せる。ちょうネクタイ姿が気に入った奥さんに、担当者は「愛らしいでしょ」と売り込みに必死。7歳じゃ大き過ぎると言うと、赤ん坊だと真夜中に泣き出してオムツを交換しなくちゃいけないと負の面を強調。結局、夫妻は喜んでOKした。
  
  
  

孤児院の修道女と、子供達が息を潜めて見守る中、ヒーリー夫妻がジュニアを迎えに来る。一目見るなり、「とっても可愛い子ね。ご近所が羨むわ」。2人を見たジュニア。「大人で、こんな青い服着てるの見たことあるかい?」。養父に「やあ、小さな相棒。僕はベン、こっちはフロー。握手しよう」と声をかけられ、「僕の名前はジュニア。僕、青が大好き。あなたは?」と見え見えの甘い言葉(1枚目の写真)。「僕の好きなのは青なんだ。嘘みたいだな」と単純なベンは大喜び。それを見て、横にいる院長の顔を、「やったぜ」とばかりに見るジュニアの目(2枚目の写真)が怖い。ベンはジュニアを抱き上げる、見ている全員に手を振る。上の階から見ている子供たち(3枚目の写真)は、左の窓の3人の意思表示が面白い。ジュニアは、ヒーリー夫妻に聞こえるように、「じゃあ、みんな、手紙書いてね」と良い子ぶって声をかけ、新しい両親が門に向かうと、振り返って全員に向かってあっかんべー(4枚目の写真)。
  
  
  
  

車が離れるまでは、感情を抑えていた修道女たちだが(1枚目の写真)、車が遠ざかると、鬼っ子がいなくなったことに全員で喝采する(2枚目の写真)。子供たちも大喜びだ。玄関の屋根の上では、シスターが1人踊っている(3枚目の写真)。このシーンを観た時、思わず笑ってしまった。
  
  
  

写真マニアのベンが、ニューホームの前でジュニアの記念撮影をする。ジュニアは、「どうして僕を養子にしたの? どうして赤ちゃんにしなかったの?」と訊く。ベンは返事に困り、「赤ちゃんだと、どんな子が生まれるか分からないだろ。不発弾かも」〔ジュニアは、爆弾そのものだ〕。「君だったら 心配は要らない。ピーボディさんが君のことを褒めちぎってたから」〔ピーボディは、ジュニアのことを「錯乱状態」と言った市の児童福祉担当者〕。「ホント?」。「そうだよ。2年連続して最も人気のある孤児に選ばれたそうじゃないか」(1枚目の写真)。「スマートな人だね」〔smartには、「狡猾で手際がいい」というニュアンスもある〕。家の中に入って、「ここ、すごい家だね」と褒めてフローを喜ばせる。「きちんと、きれいにしましょうね」。壁の段に沿って並べられた陶器の人形を見て、「保険に入ってるといいね」とニコニコしながら言う(2枚目の写真)。猫を見つけて抱くと、猫は怖がり、「フギャー」と鳴いて逃げてしまう。ベンは「変だな、こんなの初めて見た」と言い、次に、自慢のオウムを見せる。ジュニアが寄って行くと「ハロー」と言う。ジュニアの感想は、「これしか言えないの?」。そして、子供部屋に連れて行かれる。フローが、ドアを開けると、部屋の中は道化の絵やオモチャで埋め尽くされていた。良かれと思ってしたことだろうが、ジュニアにとっては最悪。「なんだよ、このアホクサども」。「どう思う?」。「道化がいっぱいだね」(3枚目の写真)。
  
  
  

その時、チャイムが鳴り、ベンの父(今後は祖父と呼ぶ)が到着する。養子のことを何も知らされていなかった祖父の最初の一言は、「気は確かか?」。「喜ぶと思ってたのに」。「自分のしたことが分かってるのか? 母親は麻薬常用者。クズの血筋だぞ。両親とも精神病院行きだ。民主党に決まっとる」。それを聞いたジュニアの顔が曇る(1枚目の写真)。ベンは、可愛い子だからきっと好きになる」と宥め、「自信をもってヒーリー家の新しいメンバーを紹介するよ。ジュニアです」とドアを開ける。室内は火の海だった(2枚目の写真)。ジュニアが怒って火を点けたのだ。煙の中から出て来たジュニアを見て、「この悪魔めが」と祖父。ベン:「大丈夫かい?」。「うん、ちょっと煙たいね」。「この道化がショートしたのかな」。「鼻から火花が出たんだ。怖かった」。祖父:「このチビ助め、嘘付いとるぞ。領収書は捨てるなよ。こいつは問題児だからな」。「あの子に聞こえてるよ。悲しむじゃないか。ただの事故だよ」。「事故なもんか。奴を追い出せ」。「僕達が決めたんだ」。「分かった、だが二度とこの家の敷居は跨がんぞ」。その時、ジュニアが投げた猫が、祖父の顔に飛んでくる(3枚目の写真)。祖父と猫はもんどりうって階段を転げ落ち、祖父は首を痛めて入院、猫は前脚を骨折した。その頃、刑務所に再収監されたベックは、巡回に来た精神科医に成り代わって脱獄していた。向かった先は、獄中に手紙をくれたJR。
  
  
  

その日の夜、ジュニアは、恐竜クッキーの箱(スタンドの横に置いてある)を持って、フローの部屋を物色していた。物音に気付いたベンが来て「何してるんだ?」と訊くと、「何も」と答える(1枚目の写真)。「紙を探してたの。おじいちゃんに何か書こうと」。「そりゃあ、いいことだな。だが、これはママの引き出しだぞ。勝手に開けちゃいかん」。そう言って、1番上の引き出しを閉めると、2段目にはムキムキの男性の写真が。3段目にはワイルドな上半身裸の男性の写真も。それを見てびっくりするベンに顔を向けながら、目だけ写真を見る時のジュニアの顔が傑作(2枚目の写真)。ジュニアは、「ホントにごめんなさい、ヒーリーさん。部屋に一人でいるのが怖かったの」と同情を誘うように謝る。新しい家の最初の夜だから怖いのは当たり前と、抱いてキッチンに連れて行ったベンは、自分もパパになって最初の夜だから怖いと打ち明ける。「すぐに学んじゃうよ」。「何をだい?」。「パパであるってこと。そしたら、すぐに僕を追い出すんだ」。「追い出す? そんなことするもんか」。そして、「いいパパになりたいんだ」と真剣に話しかける(3枚目の写真)。
  
  
  

翌朝、パジャマのまま ジュニアが外に出て来ると、ベンが「やあ、ねぼすけ君。キャンプの用意は?」と訊く。ジュニアは、「これからアニメを観ようと」と乗り気ではない。その時、ご近所の奥さんが、昨夜祖父が救急車で運ばれたため、お見舞いのケーキを焼いて持って来てくれる。ちょうど良い機会と、フローは、パジャマ姿のジュニアを、2人(奥さんと娘のルーシー)に紹介する。ジュニアは、「お目にかかれて幸いです」と手を差し出す(1枚目の写真)。「完璧な小さな紳士ね。そうでしょルーシー?」。ジュニアと同年輩の生意気そうな少女は、「すごく大きいわ。昨日まで子供なんかいなかったのに、急に7歳の子がいるなんて、気持ち悪~い(That's gross)。パーティには来て欲しくないわ」。母に咎められ、「でも、母様、この子、火葬されたレオ伯父さんみたいな格好してる」(2枚目の写真)。ここで母親が口を出し、土曜に娘が6歳になる誕生日パーティを開くので招待するよう強制する。渋々招待の言葉を口にするルーシー。それを聞いて一番喜んだのはフロー。これまで子供がいなくてパーティに呼んでもらえなかったので、大満足だ。
  
  

お向かいのロイの一家がキャンプに出かけたので、後を追いかけるベンとジュニア。フローはいない。キャンプなんかには絶対行かないタイプだ。途中の道には「熊に注意! 食べ物を放置しないこと」という看板が立っている。ベンは、心配するなといい、キャンプサイト32番を探せと言う。これがロイが取ってくれた場所だ。32番は、3つのプラスチック製の屋外トイレと、蓋もない鉄製のダンプスターに挟まれた最低の場所だった。ロイはキャンプに慣れているようなので、これは随分と不親切な行為だ。テントを張っているベンに、ジュニアは、「お友達、すごくいい場所を予約したんですね、ヒーリーさん」と話しかける。「これこそが自然なんだ。空があって、木がある」。「トイレもね」。そこに、ロイが現れ、「日が暮れちまうぞ。早く川岸に来いよ」と声をかける。ジュニアは、「僕が、『くたばれ』って言ってやりましょうか(tell him to shove it)、ヒーリーさん」と口を出す。「気にするな。それより、どうしてパパと呼ばないんだ? なぜか知りたいな」。ジュニアは、それには答えず、「家に帰ってTVを見たい」と言い、この件は曖昧になる。ロイのテントの横で、子供たち(5人もいる)が一緒に焚き火にあたっている。ジュニアは、その輪に入らないのか、入れてもらえないのか、1人でいる。「みんなロイの子供だ。頭みそは5人で1つしかない」。5人が歌い終わって、「今から何しよう?」と誰かが言うと、「マシュマロを焼きましょ」と女の子。そこで初めてジュニアが口を開く。「森に火を点けよう」。「それって悪いことだと知らないの?」。「そこがポイントさ」。女の子:「パパに言いつけてやる」。男の子:「こんな奴、無視したらいい」。それを聞いたジュニア、つかつかと焚き火の前に来ると(2枚目の写真)、おしっこをかけて火を消してしまう。逃げ出す子供たち。そのまま姿をくらましたジュニアは、大きなステーキの生肉を使って熊をテントまでおびき寄せる。そして、熊がテントまで来ると、生肉を焚き火に向かって投げる。突然現れた大きな熊に、慌てて逃げる子供たち(3枚目の写真)。
  
  
  

土曜日。ルーシーの誕生会の日。ジュニアは真っ赤な悪魔の仮装で参加する。まさにぴったりだ。誰も相手にしてくれないので、ルーシーに贈られた数十個のプレゼントに触っていると、それを見たルーシーが飛んで来て、「触らないで! 私のよ。みんな私のなんだから!」と怒鳴る。「見てただけだ」。「壊すに決まってる。あっちへ行きなさいよ!」。大声を聞いて、女の子達が寄って来る。「あれ誰?」。それに対する返事は、「ばい菌もってるから、一緒に遊べないのよ」「本当の子じゃないの。養子よ」「キモい」(1枚目の写真)。子供は残酷だ。その時、ルーシーの母が、マジック・ショーが始まると呼びに来る。2人だけになると、ルーシーは、「出てきちゃダメよ」と命じる。「なんで?」。「私がそう言うから。これは私のパーティだから、マジック・ショーを観られるか観られないかは、私が決めるの」(2枚目の写真)。締め出され、ガラス扉越しに、外でショーを楽しそうに観ている子供達を見るジュニア(3枚目の写真)。こうして、ジュニアの怒りは爆発した。
  
  
  

ここからが、悪戯の本番。主だったものは、①スプリンクラーをルーシーの部屋に持って行き、部屋を水浸しにした、②ロバの絵に針付きのシッポを付ける遊びで、目隠ししたプイヤーの向きを変えて女性客のお尻を刺させた、③庭の噴水盆の中にいた大きなカエルをパンチボウルの中に入れた、④女の子のお下げ髪の片方をハサミで切った、⑤ピニャータ〔お菓子を詰めたくす玉人形〕の中にピクルス他を詰めて(1枚目の写真)、叩き割った女性を酢まみれにした、⑥山のようにあったルーシーの誕生日プレゼントをすべてプールに投げ込んだ(2枚目の写真)、そして最後に、⑦大きなバースデーケーキの6本あったロウソクをかんしゃく球に置き換え(3枚目の写真)、点火して吹っ飛んだケーキで参加者全員がクリームまみれになった(4枚目の写真)。爆発の後、みんなに睨まれて笑うジュニア(5枚目の写真)。「これはちょっとやり過ぎだった。問題になりそうだ」。
  
  
  
  
  

その夜、ベンとフローが話している。「厄介なことになった」。「あら、そう思うの? あの子なんか追い出して、新しい猫を買うべきよ」。「めちゃを言うな」。「なら誰がボスが教えてらっしゃい」と叩くものを渡す。しかし、ジュニアが、部屋で「神様、あんなことしてごめんなさい。もう二度としません。約束します。そして、ヒーリーさんには二度と迷惑をかけません。僕に良くしてくれる唯一の人だからです」と祈っているフリをしているのを見て、ベンは許してやる。そして、翌日、祖父主催で、市長も観戦に来ているリトルリーグの試合がある。ベンは監督だ。試合は3対3のまま、7回の延長戦に入る〔リトルリーグは6回まで〕。危険球を投げられた選手のピンチ・ヒッターで、ジュニアに声がかかる。「でも、僕、野球なんてやったことないよ」(1枚目の写真)。「覚える いい機会じゃないか」。そして、「あそこに立って、ボールに当てるんだ。どんな結果になっても、誇りに思うぞ」。立派なパパになろうと努力するベンと違い、祖父は、「気でも狂ったのか? あのチビ・モンスターを試合に出すなんて」とひどいことを言う。手も足も出ずにワン・ストライクを取られると、「あいつが養子でなかったら、絶対、お前の子だ」。不甲斐なさを皮肉った言葉だ。これほど憎たらしい祖父は滅多に登場しない。2球目は、空振りして手から離れたバットが飛んでいって祖父の新車のフロントガラスを割る。ベンは、「気にするな(Shake it off)。グリップをしっかり握れ。ボールに当てろ。バットを手放すな」と教える。この最後の注意は、さっきの出来事に対する注意だったが、野球を知らないジュニアは、「バットを手放さなきゃいいんだ」と解釈してしまう(2枚目の写真)。そして、3球目を奇跡的にポコンと打ったジュニアは、バットを持ったまま走り出す。持っているだけではない、1塁手の前では外野から戻って来たボールをバットで打って投手に当て、怒った1塁手をバットで殴り、2塁手もボールごとノックアウト、みんながベンチに逃げる中、最後までホーム上で待ち構えていた捕手には、股下をくぐり抜けながらバットの先端で股間を一撃(3枚目の写真)。さすがのベンも、「悪魔を養子にしちゃった」。
  
  
  

ジュニアに手を焼いたベンは、教会に連れて行く。神父に説教してもらおうと思ったのだ。しかし、ジュニアは隙を見て逃げ出し、告解室の隣の神父の部屋に隠れる。すると、ベンが告解室に入って来る。仕方なく、格子窓を開けるジュニア。ベンは、当然神父がいると思い、「父よ、もう どうにもなりません(I'm at the end of my rope)。息子のことです」(1枚目の写真)。「彼は問題児です。恐ろしいことをしでかします。祖父には嫌われ、家内にも嫌われています。好きな者はいません。僕以外ですが。でも、我慢の限界です(I've had it)。神よ、僕はしくじりました。あの子に嫌われています。そろそろ、なすべきことに直面する時です。孤児院に返すつもりです」(2枚目の写真)。そう言って、ベンは告解室を出て行く。それを聞いたジュニアは、「ダメ、ダメ、そんなことしないで(you don't want to do that)。そんなこと最悪だよ」と叫ぶが(3枚目の写真)、もうベンには聞こえなかった。
  
  
  

ベンとフローは、市の児童福祉担当者に怒鳴り込みに行く。「直ちに引き取れ!」。担当者は、「親が悪いと子供も悪くなる」としゃあしゃあと反論。「あの子は、絶対に変だ!」。「ひねくれてるわ!」(1枚目の写真)。「養子に取ったのは、あなた方だ!」。「騙したじゃないか!」。「どうしろと言うんです? あの子は、30回目も戻されてきたんだ!」。そこでベンがハタと気付く。「今、何て言った? 30回だと? 相手は人間なんだぞ」。ここでフローが、「あの子は、モンスターよ!」と口をはさむが、ベンは構わず、「僕たちは、前任者と同じ轍を踏んできた。諦めるのは簡単だ。これじゃ、今の世の中の風潮と同じじゃないか。誰もが、イージーな逃げ道を探してる。問題が起これば、ただ放り出すだけだ。僕たちにとって課題は、小さな問題児に何がしてやれるかだ。それは、誰もあの子にしてやらなかったことだ。悪いことをしても愛してやる。もっと悪くなっても、いつか折れて、こう言う日まで愛してやる。『この人たちは、ホントに僕を愛してくれてる。僕を捨てる気なんてない。もう悪いことなんかやめよう』」(2枚目の写真)。ベンの大演説だ。
  
  

車に戻ると、ジュニアがぐったりしてハンドルにもたれている。児童事務所まで連れて来られたので、孤児院に帰されると思ったのだ。ドアが中からロックされているので、ベンが「ジュニア、開けなさい」と言うと、顔を上げたジュニアは涙のついた顔で、「ずっと一緒だって言ったじゃないか」と訴える(1枚目の写真)。「一緒だとも。ごめんよ、間違ってた。信じてくれ。孤児院には戻さない」。「信じない。友達のフリしてるだけだ。他のみんなと同じじゃないか!」。そう叫ぶと、ジュニアは残してあったキーを回してエンジンをかける。当然、初めての運転なのでめちゃめちゃだが、車は動き出してしまう。体が小さいので、足をアクセルに届かせようとすると、顔がハンドルの下になり、前が見えない。ベンは止めようと、ワイパーをつかんでボンネットの上に乗り、「左」「右」と指示する。ジュニアはそれでも車を停めない。反対車線を逆行してぶつかりそうになるが、相手が何とか避けてくれる(2枚目の写真)。ベンは、途中で、ボンネットからルーフにはじき飛ばされ、そのまま祖父の大規模店の広大な駐車場を突っ切り、店の正面を突き破ってテニスボールを詰めたタワーにぶつかって止まる(3枚目の写真)。写真の青い矢印の先に、赤い車のルーフにしがみついたベンが見える。この後、アクリルケースに入ったテニスボールの塔は崩壊した。
  
  
  

その後、帰宅して、茫然としているベンとフロー(1枚目の写真)。ベンが『エクソシスト』を読んでいるのが面白い。ジュニアの悪魔度は、エクソシスト並みという訳だ。この直後に銀行から電話がかかってきて、店舗の修理代をベンの口座から引き出したので、老後の蓄えを含めて預金がゼロになったと告げられる。冒頭の解説に書いたように、ベンは祖父の店や敷地の権利も奪われているので、破産状態に近い。人生に悲観して茫然自失となったベンは、枕でジュニアを窒息させようとするが、その時、車の音がしてベックが到着した。玄関にやって来たベックを、「やあ」と言って迎えたジュニア。ベックは、「そこをどけ、ガキんちょ。俺はJRに用があるんだ」。「それ僕だ。ジュニアだよ」。ベックは、ジュニアをつまみ上げると、「たわごとに付き合ってる暇はない」と威嚇する(2枚目の写真)「俺が探してるのは前科モンで、ガラガラヘビみたいな男だ」。「それ僕だよ、とんま! 手紙を書いたのは僕さ」〔手紙が複数形になっているので、ジュニアがベンの家に来てからも手紙を出したらしいことが分かる→そうでなければ、ベックに住所が分かるハズがない〕。「俺は、7歳の坊主に会うため、1000マイルも走ってきたのか?」。「あと2週間で8つだよ」。そこに顔を見せたベンとフローに、ジュニアは、自分の伯父だと紹介する。フローはベックを大歓迎する。ジュニアを押し付けてやろうと思ったのだ。そこで、ディナーを出してちやほやする(3枚目の写真)。ベンの方は、茫然としたままだ。
  
  
  

朝になって、ベンがふらふらと起きて来ると、壁に赤字で、「女房とガキに会いたければ10万ドル用意しろ。伯父」と書いてある。ベンは、前を何度も通り過ぎてようやく気付く(1枚目の写真)。その時には、新聞も持っていて、相手が殺人鬼だということも分かる。その時、車で移動中のジュニアは、ベックに対して持っていた好意が吹き飛んでいた。ベックが、ジュニアが役に立つと思って持ってきた小道具を、ガラクタだと言って窓から捨てたのだ。「何すんだよ!」。「お前、何様だと思ってる!」。「僕たち仲間だと思ってたのに。僕のことが好きだって」。「好きな奴なんかいるもんか。俺は 一匹狼だ」。一方、ベンはもろ手をあげて喜んでいた(2枚目の写真)。ジュニアにも、フローにも愛想をつかしていたので、二度と見なくていいと分かったことは、最高にハッピーな出来事だったからだ。ベンは、ジュニアの部屋に入ると、おもちゃを片っ端から窓の外に投げ捨てる。次に引き出しを見ると、1番上にはジュニアが描いた祖父の絵があった。頭の3つあるドラゴンだ。まさにぴったり。「創造力があるじゃないか」。2枚目はフリーを描いた絵。大口で怒鳴っている(3枚目の写真)。「うん、ぴったりだ(right on the money)」。3枚目には自分が描かれている(4枚目の写真)。「あの子は、僕が好きだったんだ」。これでベンの態度は180度変わった。そして、身代金の10万ドルを借りに祖父の元へと走る。祖父は当然、剣もほろろだ。「あのガキはモンスターだし、お前の妻は厄介者だ(pain in the ass)。最高じゃないか」。「お金貸してくれるの?」。「貸すもんか」。「なら、もう親子じゃない」。祖父は、ちょうどTVで市長選のキャンペーン中。ベンはこっそりTVカメラのスイッチをONにし、わざと祖父を煽る。怒った祖父は、TVで放送されているとは知らずに本音を言ってしまう。「有権者なんか知ったことか。俺に興味のあるのは権力と金だけだ。アメリカ人のためのアメリカ。そんな たわ言を信じとるのか? 日本人からオファーがあれば魂だって売ってやる。俺から何かをもらおうなんて思うなよ。お前にやるのはこれだけだ」。そう言って尻をまくる。これでは、市長選は落選確実だ。続編の『プロブレム・チャイルド2』では、祖父は破産し、債権者に捕まらないよう逃げ回っている。いい気味だ。
  
  
  
  

ベンは、身代金の受け渡し場であるサーカスに向かう。そこで、ジュニアを連れたベックと対面。「3つ数えるから、金を投げろ、ジュニアを解放する」。その提案に従ってベンが金の入ったリュックを投げると、ベックは一度放したジュニアをまた捕まえる。「その子を放せ!」。「なんで? こいつは、俺と来たがってるんだ」。そう言うと、ジュニアと同じ目線までしゃがみ込み、「犯罪三昧と行こうじゃないか(go on a crime spree)。全部の州を震撼させてやる。うまいモンも腹いっぱいだぞ。どうする?」と訊く。ベンの顔を見るジュニア(1枚目の写真)。「なあ、ぞくそくするだろ(let's have some kicks)。『うん』と言えよ」。ここで、ジュニアは にやりとする。「そうか、kicksか、そりゃいいや」(2枚目の写真)。そう言うなり、足でベックの股間をkickした。そして、ベックが苦痛で倒れている隙に、金の入ったリュックを持って逃げ出した。ベンはベックを止めようとするが、殴られてダウン。逃げるジュニアをベックが追いかける。山場は、サーカスのテントに入り込み、空中ブランコで逃げるジュニアが場面(3枚目の写真)。右の男性から左の男性にスイッチするところで、足ではなくリュックをつかむところがミソ。スタントにしても、結構危ないシーンだ。後を追ったベックは、ジュニアがとっさにロープを解いて転落する〔ソストランディグで怪我はしない〕。ロープを滑り降りたジュニアは、ベンに抱かれ、「ジュニア大丈夫か?」と訊かれ、「大丈夫だよ、パパ」と答える。「パパと呼んだな」。「そうだね」(4枚目の写真)。2人は、もう仲の良い親子だ。
  
  
  
  

今度は、ベックが逃げて、ジュニアとベンが追う番だ。「父さんと一緒のドライブくらい楽しいものはない」。激しいカーチェイスの真っ最中の独白だ。ジュニアが運転し(1枚目の写真)、ベンがサンルーフから身を乗り出してライフルでベックの車を撃つ(2枚目の写真)。トランクが吹っ飛ぶと、フローを押し込めたスーツケースが飛び出してベンの横に落ちる。中から、「離婚するわよ」の声がする。ベンは「黙れ」と一喝。そして、リアウインドを撃ち、最後に左後輪をパンクさせ、ベックの車は障害物に乗り上げて回転(3枚目の写真)、上下逆様になって着地する。ぶつかりそうになったベンはジュニアに急ブレーキを命じ、その衝撃でフローのスーツケースは、また飛び出し、豚を運ぶトラックの荷台に落ちる。この女性に相応しい最後だ。
  
  
  

パトカーが到着し、警官がベックを車から引きずり出すが、ベックは警官の拳銃を奪い、「このチビの裏切り者!」と言って、ジュニアを撃とうとする(1枚目の写真)。弾は、ジュニアを庇ったベンに当たった。ジュニアは、意識を失ったベンにすがり、「パパ、お願いだから死なないで! 今までのことごめんなさい!」(2枚目の写真)。「生き返ったら、二度と悪いことしないって約束するから。パパ、生き返ってよ! 愛してる!」。そう叫んで、体を揺すると、ベンの意識が戻る。「僕も、君を愛してるよ」。「パパ? 信じられないや」とジュニアは満面の笑みだ。心臓を狙ったのに死ななかったのは、たまたま胸に入っていた幸運のお守りが弾を受け止めてくれたから。いざベンが無事だと分かると、ジュニアは前言を打ち消す。「いい子でいるなんてバカなこと言ったけど、まさか本気にとらないよね?」。「もちろんさ。僕は、君らしさが好きなんだ」。「やっと、分かってくれる人がいた」。こう言って、ジュニアはベンに抱き付く(3枚目の写真)。そして、トレードマークだったちょうネクタイを外して(4枚目の写真)、思い切り遠くへ投げ飛ばす。「どうして、この人、僕が好きなんだろ? どうして両親は子供を好きなのかな? それって、『どうして空は青いの』って訊くようなものなのかな」。
  
  
  
  

     M の先頭に戻る                    の先頭に戻る
     アメリカ の先頭に戻る               1990年代前半 の先頭に戻る

ページの先頭へ